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K-Sim DP - シミュレータで積むDP乗船30日

洋上工事で活躍するSEP船、ケーブル敷設船、CSOV/SOVなどのDP作業船は、いま各所で計画され、建造、就航が始まっています。しかし、いつも不足するのは、これをオペレートできる人材ではないでしょうか。

これらの作業船に共通して求められる技能に、DP(ダイナミックポジショニング/自動船位保持)のオペレーションがあります。そしてDPオペレータ(DPO)の資格は、原則として実船での乗船経歴の上に成り立っています。

船が就航しなければ、経歴は積めない。経歴が積めなければ、船を動かす人がいない。
Kongsberg Maritime社(以下KM社)の K-Sim(R) DP は、この順序を入れ替えるための装置です。

乗船30日は、陸上で積める

Nautical Institute(NI)のDPトレーニングスキームには、Sea-time reduction course(乗船日数短縮コース)という枠組みがあります。

NI-A フルミッションDPシミュレータ(実船の船橋を丸ごと再現し、複数名のチームが実際の配置で任務全体を遂行できる最上位の構成を指します。NI/DNVのClass A に相当します)でこのコースを修了すると、DP船における乗船30日分としてカウントされます。比喩ではなく、制度上の日数です。

船がまだドックにある段階から、DPOのキャリアは動かせる。竣工日に既に人が育っている。そういう状態は、設計してつくることができます。

NIスキームで提供できるコース

・DP Induction(導入)
 必要なシミュレータ:NI-C DPシミュレータ
 定員:コンソールあたり最大2名

・DP Simulator(シミュレータ)
 必要なシミュレータ:NI-A または NI-B
 定員:シミュレータあたり最大4名

・Sea-time Reduction(乗船日数短縮)
 必要なシミュレータ:NI-A フルミッション

・Revalidation(資格再有効化)
 必要なシミュレータ:NI-A または NI-B

上記下段の Revalidation も、実務上は重要です。乗船日数が不足したDPOが、NI DPO証書を再有効化するためのコース。新しく育てるだけでなく、すでに育った人を失わないための仕組みでもあります。

DNVスキームにも対応

DNVのDPOトレーニングスキーム(DNV-RP-007/DNV-ST-0023)は、シミュレータを広く用いた訓練とコンピテンシー評価を規定しています。KM社のDPシミュレータは DNV-ST-0033(舶用シミュレータシステム)に基づきDNVの認証を取得しており、DNV認証を受けた訓練プロバイダは、DPO Start、DPO Experience、各種 DPO Specialization(シャトルタンカー/オフショアローディング、アドバンストオペレーション、リグ)といったコースを提供できます。DNV認証テストセンターであれば、対応する認定試験の実施も可能です。

幅広いDP船種に対応する

K-Sim DP が訓練対象としているDP船種は、次のとおりです。

支援船(サプライベッセル)、アンカーハンドラー、サブシー支援船、IMR船(Inspection, Maintenance and Repair:洋上構造物や海底設備の点検・保守・修理を担う船)、風車設置船(WTIV)、シャトルタンカー、ドリルシップ、半潜水式リグ。そして、お客様固有の船舶モデルを、対応するDPシステムとともに提供することが可能です。つまり、汎用の作業船モデルではなく、自社の船そのものをモデル化して訓練できます。汎用モデルで操船感覚を掴むのと、実際に乗り込むその船で訓練するのとでは、習熟の質が変わってきます。

標準搭載モデルの例

・Kongsberg Challenger II
 多目的IMR船。IMO DP Class 2(単一故障が起きても船位を保持できる冗長構成。Class 3 はこれに加え、火災や浸水など区画単位の損傷にも耐える構成を指します)。ご要望によりClass 3へアップグレード可
 リファレンスシステム:DGPS、HPR/HiPAP、RADius、Light Taut Wire、Fanbeam

・Kongsberg Britannia II
 原油シャトルタンカー。IMO DP Class 2。タンデムローディング、SPM、SAL の3方式に対応
 リファレンスシステム:DGPS、Rel DGPS(DARPS)、HPR/HiPAP、RADius、Fanbeam、Artemis

・Kongsberg Alpha Semi II
 大水深セミサブ掘削リグ。Posmoor ATA を含めることで IMO DP Class 3 相当へ拡張可
 リファレンスシステム:DGPS、Light Taut Wire、HPR/HiPAP

実船と同じK-Pos

K-Sim DP - シミュレータで積むDP乗船30日

K-Sim DP は、世界で4,000基を超えて稼働しているKM社のDPシステム、K-Pos と同一の技術基盤の上に構築されています。
訓練で触れるユーザーインターフェースは、K-Pos搭載船の船橋にあるものと同一です。シミュレータの操作を覚えるのではなく、その船の操作を覚えることになります。

K-Sim DP Maneuvering の主な構成

  • 二重冗長のK-Pos DPオペレータコンソール
  • 二重冗長のDPコントローラ
  • 独立したジョイスティックシステム
  • 船体設定の変更と故障注入(訓練中に任意のタイミングで機器故障を発生させること)を行う教官ステーション
  • RADAR/ARPA、ECDIS、最大360度のビジュアル
  • 前部ブリッジ/後部ブリッジのいずれでも構成可能
  • KM社の位置リファレンスシステム、第三者製品、標準的なオフショア船橋機器との統合

電源喪失と、チーム訓練

DPOにとって、電力管理システム(PMS)の理解は欠かせません。
スラスタや制御系への給電が失われるブラックアウトは、DPにとって最も直接的な脅威だからです。

K-Sim DP には、上位のオフショア船・リグモデル向けに包括的なPMSが実装されています。
DPOはシステムの状態を監視しながら、電源喪失時の手順を繰り返し確認できます。

このとき、教官は機関士の役を演じることができます。誤操作、予期しない負荷、部分的あるいは全面的なブラックアウトを、任意のタイミングで投入する。船橋の中だけでは再現できない事象を、訓練の中に持ち込むための機能です。

さらに K-Sim Navigation、K-Sim Offshore Crane、K-Sim Engine と接続すれば、船橋・機関・クレーンが同じシナリオを共有する部門横断のチーム訓練が成立します。
訓練の焦点は、機器の操作から、コミュニケーション、状況認識、指揮監督、チームでの意思決定、ストレスと疲労への自覚へと移っていきます。
BRM/CRM(Bridge Resource Management/Crew Resource Management:船橋または乗組員全体を対象に、人的資源をいかに活用して安全を確保するかを扱う訓練体系。もともとは航空業界で、機器の故障よりも乗員間の意思疎通の失敗が事故の主因である、という分析から生まれた考え方です)に準拠したコース設計にも対応します。

小さく始めて、育てられる

K-Sim DP - シミュレータで積むDP乗船30日

K-Sim DP は、3つの段階で構成できます。

K-Sim DP Basic(Class C)

計器操作、ブラインドDP操船(窓外の視覚情報を使わず、計器の指示のみでDP操船を行う訓練。視程不良時や夜間の操作に備えます)、ジョイスティック制御、定点保持に絞った限定タスク型です。
K-Pos同一のUI、自動定点保持(位置・船首方位の変更を含む)、Follow Target/オートパイロット/オートトラックの各モード、船体挙動・位置リファレンス/センサ・スラスタ性能のシミュレーション、風と潮流の可変設定を備えます。

K-Sim DP Maneuvering(Class B)

NI-B および DNV Class B(DP)の要件に適合するマルチタスク型です。
Basicの機能に加えて、教官による誤り・故障設定、各種リファレンスシステムやオフショア船橋機器との統合(オプション)、360度ビジュアルシステムが加わります。

K-Sim DP Maneuvering(Class A)

完全に装備された船橋環境でDP運用を再現するフルミッション型です。
NI・DNVのDPシミュレータ要件に完全適合し、後部で最低180度、前部で最低210度の水平視野を持ち、360度まで拡張可能な高精細ビジュアルシステムを備えます。

そして、これらK-Sim DP システムは、ハードウェアとソフトウェアの追加により、完全な K-Sim Offshore シミュレータへ拡張できます。DP訓練から始めて、オフショア作業やクレーン、アンカーハンドリングまで、訓練の範囲を後から広げていける。
最初の一台が、お客様の将来の事業展開を支えつづけます。

K-Sim DP - シミュレータで積むDP乗船30日

教える側のための装置でもある

シミュレータは、教官が使いこなせて初めて訓練装置になります。

K-Sim DP - シミュレータで積むDP乗船30日
  • 学習者ステーションの構成制御(何を見せ、何を見せないかを定義する)
  • ECDIS海図をベースにした演習エリアの作成
  • ドラッグ&ドロップによる船舶モデル・演習変数の選択
  • Seagen GIS による第三者の潮流・潮汐・波浪・風データの取り込み
  • 悪天候や電源ブラックアウトなど、故障・変数の投入
  • 演習中のトリガーおよび e-coach メッセージによる指導
  • 水中ビュー:船体と海底の干渉、チェーン・ワイヤ・アンカーの挙動の観察
  • 全アクティビティの自動記録と、任意区間または全体のリプレイによるデブリーフィング

そして、’resume’ 機能。演習は、任意の時点で一時停止し、巻き戻し、再開できます。
学習者が行き詰まったとき、教官はその場で助言を挟むこともできますし、決定的な数分前まで時間を戻して、やり直しせることもできます。実海域では、決してできないことです。

適合規格

K-Sim DP が対応する訓練基準は次のとおりです。

  • IMCA M117「主要DP要員の訓練および経験に関するガイドライン」
  • DNV-ST-0033「舶用シミュレータシステム」
  • Nautical Institute(NI)DP認定・認証スキーム基準
  • OSVDPA Simulator Standards version 2 ※1
  • IMCA C 014 Rev.4「シミュレータ使用に関するガイダンス」

※1 OSVDPA(Offshore Service Vessel Dynamic Positioning Authority):米国を拠点とするDPオペレータ認証機関。
NIとは別系統の認証スキームを運用しており、北米市場での運航を視野に入れる場合に関係します。

なお、KM社は、NIのDP認定・認証基準に沿ったDP教官の認定・認証を支援する訓練・評価プログラムも提供しています。
シミュレータを導入したものの教えられる人がいない、という事態を避けるための備えです。

おわりに

どのような分野でも、最後に足りなくなるのは、いつも人材です。

日本では未知の部分が多い海洋作業において、鶏と卵の関係になりがちな人材育成の課題に、K-Sim DP は、その解を持っています。

乗る前に、乗っておく。

日本海洋株式会社は、単一の製品にとどまらず、Kongsberg Maritime社とともに最適なソリューションの選定・導入から、その後のライフサイクルサポートまで、一貫してお客様をご支援します。
皆様からのご相談をお待ちしております。

本記事は Kongsberg Maritime AS「K-Sim(R) DP」ブローシャ(2026年版)をもとに、日本海洋株式会社が日本の読者向けに再構成したものです。仕様および適合規格の詳細は、最新の一次資料をご確認ください。